2025.09.13
「神楽坂め乃惣」
新派のお芝居で知られる泉鏡花作の「婦系図」にめ乃惣と言う魚屋が登場します。この魚屋にはモデルが存在しまして、それが八丁堀の魚屋で日本橋の魚河岸で仕入れた魚を神楽坂の料亭に納めていた「うを徳」。その「うを徳」が神楽坂に料亭を開いたのが明治29年。泉鏡花とも親交が深く開店披露に際して鏡花が祝辞を残しているほどです。
その「うを徳」が料亭の味を気軽に楽しめる小割烹として昭和51年に開いたのが「め乃惣」です。
昭和が平成に変わったあの日、自分は「うを徳」で修業中の身でした。(詳しくは2023.01.19の投稿をご覧下さい)
当時「うを徳」の旦那は5代目でその旦那の二人の弟さんが「め乃惣」を任されておられました。(後に三男さんは独立)「うを徳」も「め乃惣」も夜だけの営業でしたので朝から夕方まで「うを徳」の調理場で「うを徳」の親方や自分達「うを徳」の若い衆が一緒に仕込みをしていました。また「うを徳」の仕事が早く終わった時には片付けの手伝いに伺うと褒美にビールを飲ませていただいたりしました。懐かしい思い出です。
前置きが長くなりました。その「め乃惣」がお盆期間中も通常営業すると言う事で、去る8月15日のお昼にカミさんと伺いました。東京メトロ飯田橋駅を出て神楽坂を登りまずは神楽坂の毘沙門様こと「善國寺」にお参り。御朱印を待っているとちょうど正午になったので黙とうの後「め乃惣」へ。「め乃惣」は毘沙門様の向いの路地をちょっと入った所にあります。現在は次男さんの息子さんが先代の味を受け継いで切り盛りされておられます。暖簾をくぐり昔と変わらない雰囲気の店内でお昼の御膳をいただいて参りました。(お料理の写真が無くてすみません)。看板メニューの「海老真丈」を初めてちゃんといただきました。あんなにたくさん下ごしらえしていたのに(笑)。ちなみに入り口を入った所に飾ってあるのは新派の名優先代の水谷八重子さんの直筆による「め乃惣」の色紙です。お見落しなく。
当時花柳界だった神楽坂は今はすっかり様子が変わってしまいましたが、ここにはまだその名残が感じられます。神楽坂の路地にひっそりと佇む名店です。どうぞ皆様足をお運び下さい。
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